富岡高校に注目が集まる理由

福島県立富岡高等学校への注目が集まっている。56年の歴史がある普通科の高校が、 短期間でその進化を遂げたのである。人工芝のグラウンドとテニスコート、 バドミントンの公式試合ができる体育館。もちろん、変わったのはハード面だけではない。 「国際コミュニケーション」「福祉健康」「国際スポーツ」の3つのコースを擁する国際・スポーツ科も新設した。 たったの一年で、だ。特色のある教育を見事に形成しつつある富岡高校に赴任して4年目の青木淑子校長に語ってもらった。

急速に進化し続けられる理由

急激な変化を可能にしたものとは何だったのか。
「普通のやり方ではできませんよ」と青木校長。「教育委員会ができ、地元の要望を受け、 学校が変わるというのは普通五年はかかります。ところが、当校では学校を変えますと言われて、 たった一年で変えてきているわけです。このスピードは尋常ではありません。 教科も一年ごとに見直して変えてきていますから、先生方にはたいへんなことだったと思います。 英断があり、すべての力が集中して、それで初めてできることです。それでも一年というのは例がないと思います。」

「生徒たちを御覧になっていかがですか。非常に活き活きしているでしょう。 楽しく学んでいるという感じが伝わってきませんか。」青木校長は誇らしげに生徒たちについて紹介する。 「生徒の多くは目的を持って学んでいるからだと思います。」

富岡高校の魅力@---驚きのアイデアが詰め込まれた語学の授業

語学のクラスでは、ALTと教師が見事にチームティーチングを行っており、生徒たちも積極的に発言をする。 生徒たちのスピーキングの時間が始まるやいなや、大音量の音楽が流れ出す。 「生徒たちがもっと積極的に大きな声で話せる」ためだ。「静かな空気だと誰も話さないようになってしまうんです」 と担当の教師。鮮やかな掲示板、生徒が自由に歩き回る演習、いろんなアイデアが盛り込まれた授業は 生徒たちを引きつけている。

青木校長はALTについてこう話す。「先生方もALTも自然に英語が体の中に入っていくような教え方をしていると思います。 本校には職員が約30名おりますが、3名のALTがいるということは、1割が外国人ということになります。 これは大きな影響があると思います。私たちは、実践的な外国語教育を通してコミュニケーション能力の育成を図ること、 自分の意見や考えを適切に表現すること、そして国際社会の中で活躍する人材を育成することを目標としています。」

富岡高校の魅力A---「国際・スポーツ科」の擁立

富岡高校は1学年2クラスの普通科のみだったが、平成18年4月の入学生から1学年3クラスの「国際・スポーツ科」を擁する高校へと変貌した。 話は平成16年にさかのぼる。JFA(財団法人日本サッカー協会)から福島県に、公立学校と連携したJヴィレッジを拠点とし、 サッカーだけではなく人間的な教育、論理的思考、コミュニケーションスキル、IT、外国語等総合的な教育を行い、 日本サッカーのレベルアップと社会をリードしていく人材の育成を図ることを目的とする人材育成プログラムの提案があった。

その後、「双葉地区教育構想検討協議会」が設置され検討が進められた。そして、富岡第一中学校、富岡第二中学校、楢葉中学校、 広野中学校の4つの中学校と富岡高校が、教育課程や教員、生徒の連携を深める形で中高一貫教育を実施することになった。

一方、まだまだ普通科志向は強いという。「普通科はオールマイティーですから。広く浅く全般を学び、大学に入ってから 専門を学ぶわけです。どこにでも対応できるわけです。それに対して国際・スポーツ科は、その道の専門性は身に付きますが、 それ以外の一般的な勉強は少ないので進む対応範囲は狭くなってしまいます。ですから、保護者の方々は普通科に学ばせ、 どれにでも対応できるようにするのを求めるようです。しかし、ご覧になってわかるとおり、当校は普通科にはない魅力で 溢れています。そこをもっと宣伝してもっと多くの生徒に来てもらいたいと願っています。」

富岡高校の魅力B---JFA(財団法人日本サッカー協会)との連携

「サッカーはJFAと連携しており、JFAからコーチが来ます。JFAアカデミーというJFA直属のサッカー部があり、 それとは別に学校のサッカー部もあります。全国のクラブチームの大会に出場しますが、 アカデミーに所属している生徒は学校の部活動に入ることができません。学校所属のサッカー部は男女ありますので、 サッカーチームが富岡高校には計三つ存在しています。」

中田選手のシュートを受ける

スポーツコースに所属し、JFAアカデミーでサッカーに汗を流す生徒21名は、フランス語を学んでいる。コーチがフランス人だからだ。 「苦労しながらフランス語を学んでいますよ」と青木校長は笑う。JFAと提携するからこそ、生徒たちも貴重な経験をすることができる。 「日本代表チームと練習試合をしたり、元日本代表チームと交流試合をしたり(このときは勝利をおさめてしまった!)、 ワールドカップの練習相手に使ってもらったりもしました。ときには中田選手のシュートを何十発と受けられたので、 キーパーをした生徒にはとても勉強になる素晴らしい経験だったようです。」

フランスのルイ・バスカン高校との文化交流

「当校はフランスのルイ・バスカン高校と姉妹校提携していますので、昨年は文化交流で三人、 サッカーで三人行っています。特にサッカーで行った三人はルイ・バスカン高校での授業の後、 将来のサッカーフランス代表を目指している同年代の子どもたちと一緒にトレーニングを行いました。 そこでの選手育成プログラムが日本のJFAアカデミー福島のモデルなっています。」

「日本全国でJFAが連携している高校は他にありません。富岡高校で連携が始まったので、 静岡や九州の高校で同様にやりたいと名乗りをあげている高校があるそうですが、 学校のカリキュラムや施設を変える必要もありますから、腰を据えて県が取り組まない限り、 生半可な気持ちではJFAと提携することは難しいと思います。」

富岡高校の魅力C---LPGA(ゴルフ協会)との連携

「ゴルフはLPGAと連携しており、プロコーチを送っていただきそのコーチが指導しています。 普通はプロと連携している高校はありませんし、目指してくる子どもにとっては最高の環境があります。 施設も人的にも至れり尽くせりの学校にもかかわらず、他の県立高校と同じ授業料なのですから。」

富岡高校の魅力D---日本バトミントン協会との連携

「バドミントンも日本バドミントン協会と連携していまして、中高一貫で、全国から富岡一中に入り、 その後、富岡高校で指導を受け、オリンピックに出場するような選手を育成しています。 ゴルフでもバドミントンでも連盟と提携して全国から生徒が集まってくる学校というのは非常に珍しいと思います。」

富岡高校の魅力E---130名が参加するオープンスクール

富岡高校では今年オープンスクールを二回実施し、参加者の前でコミュニケーションや模擬授業を行った。 「たいていは英語科の先生に模擬授業をしてもらいます。ALTの先生が活躍してくれますので、 一緒に来ていただく親御さんは『こんなに楽しい授業があるのですね』と驚かれています。 フランス語のミニミニ授業もやってもらいますが、二回目は130名くらいが出席していました。」

「高校進学は、中学生の意志もさることながら、中学校の先生の進路指導によるところがものすごく大きいと思います。 また、保護者の方々が面白い学校だな、子どもを行かせてみようかなと思ってくると違ってきます。 お父さんやお母さん方には、当校の素晴らしさを分かっていただけると思います。」

他の学校との違いを次から次へと熱を込めて語る青木校長。生徒よりも誰よりも、富岡高校の魅力を一番感じているのは青木校長なのだろう。 活き活きとした生徒の表情が溢れている富岡高校は不思議な魅力で溢れている。「時代の感覚より何歩も先に行っている学校です」と自負する。 その言葉には先生方と生徒たちの自信が凝縮されていた。

 

バックナンバー:

特色のある教育を---福島県富岡高校(07年12月)

英語を、十分な論理的思考により使いこなすことができる世界に通用する人財を育てる(07年5月)

「プロジェクト発信型」英語プログラム(07年3月)

 

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