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小学校英語教育の第一人者:岐阜大学 松川禮子先生に聞く中教審の動きと最近の小学校英語教育について

岐阜大学教育学部教授松川禮子先生を研究室にお訪ねし、中教審の動きなど最近の小学校英語教育についてお伺いしました。聞き手は弊社企画担当役員中口達也です。
松川禮子先生 プロフィール
岐阜大学教育学部教授
中教審外国語専門部会委員、及び文科省教育研究開発評価会議協力者
小学校の運営指導委員として指導も行っていた。

松川禮子先生:
中教審の外国語専門部会委員や研究開発校の評価委員として

松川先生が小学校英語に長く携わってこられた事は大変に有名ですが、現在は主にどのような形での活動が多いのでしょうか。

一つは中教審の外国語専門部会の委員です。あれはまだ続いていて、3月の終わりに一応審議結果をまとめたのですが、それで終わりというのではなく、この部会は小学校英語のことだけでなく、中学校・高校のこともやっていく訳で、この専門部会の委員を現在もやっています。それから、同じく文科省の教育研究開発評価会議協力者という役目があり、文科省の研究開発学校の選定や実地調査をして研究開発のアドバイスをする仕事もしています。研究開発学校の指定は概ね3年間なのですが、主に2年目に実地指導に行く事が多くなります。


また、地元の岐阜県では、県の研究指定学校の運営指導委員として小学校英語や小中連携の指導にもあたっています。学会関係では小学校英語に関する学会が2つありますが、両方とも役員をしていますし、小学校英語だけでなくその他の学会の役員もしています。

外国語専門部会の文書は、
答申でも報告書でもなく「審議状況のまとめ」という性格のもの

私たちの目に触れるのは中教審の専門委員としての松川先生ですが、先生も委員のお一人として関係しておられる3月27日の外国語専門部会の報告は、どのように捉えたらよいものなのでしょうか。

あの文書の性格は難しいものです。皆さんよく答申ですとか報告書ですとかおっしゃるのですが、正確に言うと答申でも報告書でもないのです。外国語専門部会は2年ほど前に発足したのですが、昨年秋の中教審の中間答申で小学校段階での英語教育の充実の必要性が謳われたことに関連して、昨年度末までに外国語専門部会で具体的な方策を検討して、審議状況を整理するように言われて、その整理したものがこの3月27日に出たものです。ですから結論が出ているわけではなく、教育課程部会での審議の参考にして下さいというものです。勿論専門家が審議したものですから、今後の施策の一つの根拠になる文書には違いありません。

小学校英語の位置づけは早ければ今年中にも明確に。
早ければ平成20年度から新しい形の小学校英語を実施!

3月31日に、外国語専門部会の中島座長が、教育課程部会に「外国語専門部会の審議状況」について報告しましたが、一部の新聞報道にもあるとおり、小学校5、6年での必修化について真っ向から反対した委員は2名だけで、他の多数の委員は賛成ないしは許容という態度だったようです。ただそれで結論が出たわけではなく、いま教育課程部会は、小中高の部会を設け、それぞれの学習指導要領を作成するグループに分かれたようです。

今後は小学校部会が、英語の扱いをどうするのかを審議することになります。新しい学習指導要領は(遅くとも)今年度中、あるいは早ければ今年の末までに出されるかもしれないので、小学校英語の位置づけもその時には明確になります。

外国語専門部会のまとめでは、5,6年で必修化を謳っていますので、この線にそって審議するなら、道徳のような扱いにするのか、それとも総合的な学習の中に位置づけるのか、また時間数は35時間なのか、それとももう少し少ない時数なのか、あるいは35時間だが何年間かの猶予期間を設けるのか等の検討もなされるでしょう。そして、もし18年度末に新学習指導要領が告示されると1年間の猶予期間を経て前倒し実施が可能になりますので、一番早いと平成20年度から小学校英語を新しい形で行うこともあり得ることになります。

教育の機会均等と中学校英語への接続:
小学校英語教育の現状、取り組みに広がる差

そういう見通しの中で全国的に見ると、小学校英語は何らかの形では実施されていますが、実質的には殆どやっていないところもあるようで、先生は全国の状況をどう御覧になりますか。

色々な実施状況調査を数字の上で見ると、94%くらいの学校が何らかの形でやっていますが、平均は年間13時間くらいです。文科省も気にしているのは、すごく少ないところ、つまり年間5〜6時間以下という所が20%弱あるということです。そういう所が年間35時間やるのはすごく大変だなあというのがあります。さらに指導形態にしても、学級担任とALTとのティームティーチングが圧倒的に多く、主力は学級担任がやっていると調査に答えているのですが、実態はそうは思えないのです。現在小学校の教員は全国で41万人位いるのですが、その中で本当にやっているといえる先生がどれほどいるのかは、残念ながら疑問視しています。研究開発学校や特区などで熱心に取り組んでいる先生方はいらっしゃいますが、全体から見るとまだまだ少数派だと思います。ただ今回のような5,6年で必修化というのが出てきたのは、文科省が現状の学校裁量による英語への取り組みの差が無視できないほど大きなばらつきになっていることに対して、「中学校に入るまでの一定の条件整備をして、教育の機会均等の観点から整える責任を強く自覚しだした」というのが今回の措置だと思うのです 。

なぜ小学校英語は5年生からなのか?
中学校英語への接続を考える

今回のもので、「意外だ」という反応が一部の方々からあったのは、「5年生から必修」という点です。多くの学校では低学年からやっていて、低学年で非常に成果が上がっているといっているにも関わらず、それを5年からということでまとめた訳です。が、それは反対にいうと、やっている内容のみならず方法論や根本的な考え方の異なる小学校英語活動が行われている中で、中学校英語への接続を何とかしたいというのが今回のものに表れているのではないかと思います。小学校英語充実の方向性は色々あると思いますが、とりあえず今回やったのは、中学校に入るまでに、ここまでは小学校でやるべきだという形で平等性を保障というように考えたのだと思います。

小学校英語必修化への道:一番の課題は教員の研修

必修化に向けて実質的には動いているように感じます。先生のお話によりますと、早ければ平成20年度から前倒し実施の可能性もあるようですが、それまでに最低限解決しておかなければいけない課題は何でしょうか。

ありすぎるくらいありますね。外国語専門部会でも指摘されていますが、必修化するにはかなりの条件整備をしないと無理ですね。小学校の先生にはかなり負担であろうと論議されました。一つは教員研修です。小学校英語について一番問題だったのは、誰が教えるのかがずっと言われてきました。外国語専門部会のまとめでは、当面は学級担任あるいは担当教員とALT等とティームティ−チングとしていますが、教員の研修をかなりしないといけないでしょう。

求められるリーダー的先生の養成とティームティーチングのノウハウ

全小学校教員の研修はすぐにはできないですが、少なくとも各学校のリーダー的な先生を養成する事が第一でしょう。このリーダー的な教員を担当教員と考えることができます。この担当教員が専科として5,6年全てを教えるわけではありませんが、各学校で中心的役割をもつ人が全国小学校数に匹敵する2万人以上は必要という事です。

また各種調査によると、保護者も教員自身も、一人で教えるのでなく、誰かとティームティーチングを望んでいます。教員研修の中には、ティームティーチングのやり方についての指導も必要です。必修化ということになれば、教員研修についても、小学校英語の考え方とそれに基づく指導内容を文科省が提示することになるでしょう。

適切な人的配置の準備を早急に

最後に、このような状況の中で、教育委員会への提言をお聞かせください。

最短ではかなり早い時期の導入もあり得るので、各自治体の対応も大変だと思います。特にどういう人的配置をするのか、具体的に言えば、小学校英語担当の指導主事など本当のリーダーをある程度目星をつけておくことでしょうね。それは中学校や高校の英語の先生という事ではなく、小学校で実践者として力のある人材がかなりいるはずで、こういう人材の把握が大切です。また何年か前に中央レベルで小学校英語活動の研修を受けた人々が全国にいるはずで、こういう人材の中でかなり力のある人を然るべきポジションにつけてやっていく等の人事配置を今から考えておくことは必要だと思います。

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